★それはダメ、今言ってもダメ、早く言わなきゃダメ・・・
高校受験の練習課題として、②「大切なもの」という作文を書いた時のことだ。中3の栄ちゃんは、「野球のグローブ」をテーマにして書き始めた。こうした場合、部活での練習や大会で、どのうようにグローブと共に過ごしたかが、何か一つ書ければばっちりだ。あとは、それについての思いや、これからの思いを書けばいい。
な・の・に、、、その実体験がさっぱり書けず、替わりに「とても大切だ。かけがえのないものだ。これからも大切にしたい。大切なグローブ!・・・」などと、同じコトバが繰り返されてばかり。コトバが滑ってる。結局、3回も書き直してもらったが、上手くいかない。油汗の染み込んだヨレヨレの原稿用紙が、彼の心を映していた。
90分3本勝負。苦闘した授業も終わろうとしている、正にその時、突然!栄ちゃんは「ムンクの叫び」のように頭を抱え、情けない声で叫んだ。
「あぁ、オレ、グローブなんて大切じゃないんだよなぁぁぁ」
そのとき突然、私の頭の中で、それはダーメ、今言ってもダーメ、早く言わなきゃダーメ、ダメッ、ダメッ、ダメッ・と、トータス松本が歌い出した。ウルフルズの「だめだめソング」を。トータス松本、呼んで来たいぐらいだ。目の前で歌ってほしいよ。私も一緒に歌いたいぜ。まったく。「だったら最初からちゃんと、大切なものを探せーーー」。
文章には、根本思想が出てしまう。
でも、彼はそのあと閃いた。「そうだ、バットだ!小3の時に買ってもらったバット!」。そう叫んで、彼は黙々と原稿用紙に向かったのである。
いい加減に書いていた90分は、ムダだったのか? いや、そうじゃない。彼にとってはムダではなかった。自分の奥にしまってある、大事なものにたどり着くまでに、不要なものを書き分けていく時間が必要だった。それが最初の90分だったのではないだろうか。でも、次は最短距離を行け!
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